前節で物体の運動状態の変化は速度の時間変化率である加速度で表され、加速度は力の作用で生じることを説明しました。また、同じ力が作用したときに、物体によらず同じ運動状態の変化を生じるわけではなく、私たちが重い、軽いと感じる感覚を物体の運動状態の変化のしにくさを表す質量を用いることで物体の運動を表現できる可能性を示唆しました。
本節では、上記を踏まえて力、質量、加速度といった量を用いて物体の運動を数学的に表現する手段を説明します。
ここで、物体の運動の数学的表現の成り立ちは、実験事実に対して数学的概念を適用して自動的に導出されたという性格ではなく、経験的に事実であろうという自然観を物体の運動に関する法則として提示したものであるため、力学の是非は理論による解析結果が現実の物体の運動を説明可能かということで確認する必要があります。ここで、法則とは、原理と考えられる、それ以上に掘り下げることが不可能な、その正しさは法則を用いて得られた結果に矛盾が無いことによってのみ確認が可能な根本的な概念のことを意味します。
そして、現代社会において、機械は力学を用いて運用され、私たちは滞りなく生活できていることから、少なくとも日常生活に関与する現象の範囲内では矛盾は無いといえるため、力学は正しいものとして安心して勉強してください。