本章の冒頭で力は物体の運動の状態を変化させると述べましたが、運動の変化は加速度により表現されることから、力もベクトル量であることが要請されます。
では、力とは何かというと、私たちの日常的な経験から物体を動かすときに物体に及ぼす作用をなんとなく力と呼んでいるにすぎず、それが物体の運動を支配するベクトル量である保証はありません。
実際、ばねばかりを用いた図4-1-9に示す静的な実験では、力F1と力F2のベクトル和F4が力F3と釣り合うという結果が得られることから、私たちが力と呼んでいる作用はベクトル的な合成が可能であるため、力はベクトル量であると結論しています。
このとき、この作用が動的な運動も含めて運動を変化させる作用である力足り得るかというと、その作用を物体に加えたと仮定した上で基礎方程式を解析した結果が、現実の物体の運動と矛盾が生じないことを確認する必要があります。
そして、結論としては、現代の生活において、この仮定を元にして得られた結果により世の中が上手く回っていることから、私たちが力と呼んでいる量はベクトルとして振る舞っていると結論できるので、力がベクトルとして振る舞うとの確信のもと、実際に力学を使って物体の運動に関する見方を習得していってください。

図4-1-9. 力がベクトルであることの静的実験