4-1-5 力

 本章の冒頭で、力は物体の運動の状態を変化させると述べましたが、運動の変化は加速度により表現されることから、力もベクトル量であることが要請されます。

 では、力とは何かというと、私たちの日常的な経験から物体を動かすときに物体に及ぼす作用に力と名付けたにすぎず、それが物体の運動を支配するベクトル量である保証はありません。

 実際、バネばかりを用いた図4-1-8に示す静的な実験では、力F1と力F2のベクトル和F4が力F3と釣り合うという結果が得られることから、私たちが力と名付けた作用はベクトル的な合成が可能であるため、力はベクトル量であると結論しました。

 このとき、この作用が動的な運動も含めて運動を変化させる作用である力足り得るか確信を得るためには、この作用が物体に加わったと仮定した上で基礎方程式を解析した結果が、現実の物体の運動と矛盾がないことを確認することが必要になります。

 そして、結論としては、現代の生活において、力と名付けた作用が物体の運動を決めると仮定した解析の結果により世の中の機械が正確に運用されていることから、私たちが力とよんでいる量はベクトルとして振る舞っていると結論できるため、力と呼ばれる量は運動を決定するベクトルという確信のもと、実際に、現在、確立している力学を習得していってください。

図4-1-8. 力がベクトルであることの静的実験(力の合成)