4-1-6 質量

 以上の考察では物体の運動の変化のしやすさ(しにくさ)については言及しませんでしたが、私たちが感覚的に認知する重い、軽いという感覚は物体の運動に影響することは経験的に確実です。

 そして、このことは変位、速度、加速度、力だけでは運動を記述する要素が不十分であることを意味していて、さらに運動の変化のしにくさの大きさに関する量を定義する必要があり、この量は質量とよばれます。

 この質量は私たちが軽いと感じる場合は運動を変化させやすく、重いと感じれば運動を変化させにくいことから運動の変化のしにくさを表す物理量といえて、運動状態を維持する性質を慣性と表現することから運動の変化のしにくさ、つまり、慣性の大きさを表すスカラー量として慣性質量として定義されています。

 さらに万有引力を定義する際には慣性質量と別の概念である重力質量という量が現れますが、実験的にほぼ同値であることが確認されていて、理論的には相対性理論における等価原理とよばれる概念により両者は同一であることが結論されていて、区別すると余計な混乱が生じるためか高校物理では特に区別せずに質量と表現されています。詳しく知りたい人は大学に合格した後、力学、電磁気学、相対論などを学んでみてください。